上山(かみのやま)とカベルネ・ソーヴィニヨン栽培の歴史


<Yoshio Cabernet Sauvignon2019> Coming Soon...
2022.10発売


プロローグ


木村 義男(きむら よしお) 【1927生まれ、蔵王ウッディファーム代表取締役 木村義廣の父】は上山のワイン用ブドウ栽培の萌芽期を支え、当時を知る唯一の人物です。
食用ブドウ栽培が全盛期の1974年にサントネージュワイン(当時は協和発酵)との契約栽培の為、フランスより輸入されたワイン専用品種カベルネソーヴィニヨン(黒ブドウ品種)を他に先駆け植え付けを始めました。
山形県は雪の降る寒冷地でありながらメルロ(黒ブドウ品種)の栽培事例で一定の成果があり、さらなる付加価値の高い品種を模索する中でカベルネソーヴィニヨンが候補に挙がりました。しかし今でこそ絶大な知名度があるカベルネも当時は展望も読めない品種でした。そこで地域のリーダー的存在だった義男が率先する事で、所属していた組合メンバーもその情熱に応える形で栽培者が増え、全国的にも先進事例として大きな注目を集めました。
今やカベルネの栽培適地として【山形県上山市】が有望であるという背景には、先人たちの大きな決断と挑戦があった事は忘れてはいけない事実です。


義男畑のある上山


義男がカベルネを植樹した畑は、上山市の東側に位置する呑岡山の西向き斜面に位置しています。海抜で約300Mの通称【義男畑】は、小石が混じる赤褐色の山土であり適度な粘土と有機質が含まれ果樹栽培には好条件が揃っていました。 また畑には傾斜がある事から排水性も良好であり、特に成熟期の水分を拒むカベルネには正に打ってつけの立地でありました。 義男畑に限らず上山市がカベルネ栽培に適した条件として

・萌芽期から収穫期までの有効積算温度がカベルネの生育条件に合っている

・萌芽期から収穫期までの降雨量が800㎜付近と比較的少ない

・収穫期である10月の晴天率が高い

・成熟期間中である9月以降の夜温が低い

・降霜時期の平均が11月中旬であることから生育期間が長い

といった点が挙げられます。これらの条件は晩熟系品種である カベルネの生育に有利に働き、VTに限らず糖酸度が高い水準でバランスが取れ、色素やタンニンなどのフェノールの蓄積を顕著にしながら、他の黒ブドウ品種に比べ耐病性に優れた結果に結びついています。


義男カベルネが生まれるまで


2019年 12月。これまで40年以上に渡って優れたカベルネを産出してきた義男畑も引退の時期を迎えていました。当時92歳の義男本人が剪定や誘引、笠かけを行い収穫までを見守ってきていましたが、自身の体調を鑑みて2020年の収穫を最後にすると決意を固めました。
【YOSHIO Cabernet Sauvignon】の構想が立ち上がったのは、この時期からです。
義男畑の歴史を、広く後世に残せるようにブドウだけで醸そうと思いました。
幸いなことに2019年の山形はボルドー系品種にとって素晴らしい気候条件が揃いました。
病果が無く綺麗な状態で収穫できたので、酵母添加はせずに野生酵母のみで醸しています。
ワインは全てフレンチオークで12か月ほど貯蔵され、無濾過にて瓶詰めされています。
味わいが落ち着くまで、更に1年以上をセラーで貯蔵してから出荷していますが、このワインは未だ熟成に耐えるポテンシャルがあります。
義男と共に半世紀を歩んだカベルネは、惜しまれつつも2020年の収穫を最後に伐根されました。
その存在を確認する術は、2019年、2020年の【YOSHIO Cabernet Sauvignon】に含まれた全てです。


YOSHIO Cabernet Sauvignon2019 テイスティングコメント


漆黒のブドウを、そのまま反映した艶やで濃い紫色のワイン。
香りが開くには時間が必要です。
2022年10月現在は、抜栓して1日後から香りが開いてきます。
直ぐに楽しみたい場合は、2~3時間前のデキャンタをお勧めします。
カシスリキュールとブルーベリー、スミレ、針葉樹の清涼感、葉巻のロースティさと甘い芳香。
熟成からくる香りは今だ僅かであり、今後の熟成で更に風格が表現されてくるでしょう。
義男カベルネの特徴でもある、緊張感ある酸味は馴染み始めています。
無補糖ゆえのアルコールから感じるボリュームではなく、果実味の強さからくる緻密なエキスを豊富に感じ不足感を感じさせません。タンニンの攻撃性は無く、しっとりと包み込む大らかさに溢れています。


義男畑のこれから


2022年4月
私達が義男から受け継いだ畑には新たにシラー(黒ブドウ品種)を植樹しました。
山形ではシラーは殆ど前例がありません。
さながら、義男がカベルネを植えた当時の心境に近いかもしれません。

今後の上山を代表する品種となるか、数年後に他の品種に変更になるか。
それは、まだ分かりませんが…。
義男の【意思】と【情熱】は
土地と栽培者に受け継がれ宿る事でしょう。